覆工自律型打設ロボットを目指して「セントルフューチャーズ(TM)」を現場適用

2024/05/21  戸田建設 株式会社 

新着情報 覆工自律型打設ロボットを目指して「セントルフューチャーズ(TM)」を現場適用 国内で初めて、従来の締固めが必要な覆工コンクリートの自動打設を実現

2024/05/21

戸田建設(株)(本社:東京都中央区、社長:大谷 清介)は、大栄工機(株)(本社:滋賀県長浜市、社長:小林 雅彦)、ムネカタインダストリアルマシナリー(株)(本社:福島県福島市、社長:永松 孝明)、(株)JUST.WILL(本社:福岡県福岡市、社長:西島 茂行)と共同で、山岳トンネルにおける覆工コンクリートの自動打設ロボット「セントルフューチャーズTM」を開発し、国土交通省中国地方整備局発注の「令和3年度木与防災木与第1トンネル工事」に適用しました。

本技術は、コンクリート打設口を自在に切り替える「スイッチャーズ(R)※1」にセンサや締固め機械などを連動させることで、覆工コンクリートで主流な締固めを必要とするコンクリートにおいても、打込から締固めまでの一連の打設作業を初めて自動化しました。これにより覆工コンクリート打設作業の効率化、省人化を図ることができます(図-1)。

図-1 セントルフューチャーズの主要設備

※当社リリース「コンクリートの打設口を自在に切り替える「スイッチャーズTM」を開発」

開発の背景

次のような背景から、一般的な配合のコンクリートを用いた覆工コンクリートの自動打設に取り組んできました。

  • 覆工コンクリートの打設作業は、狭隘な作業空間において、重い打設口の開閉や窮屈な態勢でのコンクリートの締固めなどの苦渋作業を余儀なくされます。
  • 建設業界は慢性的な人手不足が問題となっており、建設工事の効率化、省人化が求められています。
  • 締固め作業をなくすために自己充填性を有する高流動コンクリート等を用いた場合、自動打設の設備費用と併せると費用が高額になることが想定されます。

本技術の特長

本技術は、覆工コンクリートで一般的に用いられるスランプ15cm程度のコンクリートに対して適用可能です。スライド型自動配管切替装置である「スイッチャーズ」を中心として、各種センサやバイブレータを組合せてセントル(覆工コンクリート打設用の移動式鋼製型枠)に配置することにより、覆工コンクリートの側壁部から天端部までを自動で打設することができます。これによって従来人力で行っていた打設ホースの移動、打設口の開閉、コンクリートの締固めなどの作業が不要になります。

本技術を構成する主な設備

  1. 12種類の配管切替装置

    ポンプ車から圧送されたコンクリートは自動配管切替装置(分岐4方向)を経由して「スイッチャーズ」により打ち込まれます。「スイッチャーズ」は打設の完了した高さの打設口を自動で閉じて、コンクリートの打ち上がりに合わせて上段の打設口から打ち込むように切り替わります(図-1、写真-1)。

  2. 2各種バイブレータ
    • センサ付き棒状バイブレータ
      側壁部のコンクリートの打ち上がりを内蔵のセンサが検知し、自動で一定時間加振することでコンクリートを締固めます。締固め後は自動で上方に移動し、次の層を締固めます(図-1、写真-2)。
    • 自動伸縮式バイブレータ
      天端部を締め固めるためのもので、電動で自動昇降可能です。天端部のコンクリートの充填に合わせて自動で締固めを行い、締固め完了後は自動で降下します(図-1、写真-3)。
    • 型枠バイブレータ 側壁部打込時において、打設口の下方に山形状に溜まったコンクリートに自動的に振動を与えることでコンクリートを水平に均します。天端部においては、コンクリートを妻部まで充填するための補助に用います。 写真-1 スイッチャーズ 写真-2 センサ付き棒状バイブレータ 写真-3 自動伸縮式バイブレータ
  3. 3各種センサ
    • 打ち上がり位置を把握するセンサ
      セントル全体に打設感知センサを多数配置し、コンクリートの打ち上がり位置を把握します(写真-4)。
    • 天端部の充填検知センサ
      天端部の防水シートにシート状の充填検知センサ(ジュウテンミエルカ(R)※2)をあらかじめ1本設置しておき、コンクリートが天端部まで充填されたことを把握します(写真-5)。
    • 圧力センサ
      セントル全体に多数配置した圧力センサでセントルに掛かる圧力状況を可視化します。
    写真-4 打設感知センサと管理画面 写真-5 ジュウテンミエルカのセンサ部と管理画面

    ※当社リリース「覆工コンクリート打設時の品質管理を飛躍的に向上させる超薄型シート状センサを開発」

  4. 3統合管理システム

    センサで把握したコンクリート位置に合わせて機器を自動制御するためのシステムです。主に次の制御を行います。

    • コンクリートの打ち上がりに合わせて、「スイッチャーズ」、型枠バイブレータ、自動伸縮式バイブレータを自動で稼働させます。
    • 天端部の圧力値とジュウテンミエルカのコンクリート検知結果より自動で打設完了を判断し、回転灯で知らせます。

現場適用

セントルフューチャーズTMを中国地方整備局発注の「令和3年度木与防災木与第1トンネル工事」に2023年11月から導入しています。打設開始初期の覆工スパンでは機能の一部分を用いて打設を行っていましたが、2024年2月13日から全機能を用いた自動打設を開始しました。覆工コンクリートの打設を自動化することにより、従来6名程度の人員を要していた打設作業を4名で行っています(写真-6、写真-7)。

写真-6 セントルフューチャーズ搭載セントル 写真-7 脱型後の覆工コンクリート

今後の展開

当社は今後も現場での適用を継続し、打設作業に要する人員を従来の1/3にあたる2人程度に省人化することを目指し改良を加えていきます。さらに、各種センサから得られるデータの活用の幅を広げるなど、覆工コンクリート打設作業の自動化を推進していくことで、覆工自律型打設ロボットの開発を目指します。

PDF形式のファイルをご覧いただく場合には、Adobe Acrobat Readerが必要です。

他の画像

関連業界