PIK3CA遺伝子変異を有する乳がんに対するPI3K阻害剤inavolisibの導入契約締結について

2024/07/31  中外製薬 株式会社 

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2024年07月31日

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PIK3CA遺伝子変異を有する乳がんに対するPI3K阻害剤inavolisibの導入契約締結について

  • PIK3CA遺伝子変異を有する乳がんに対して開発中の経口PI3K阻害剤inavolisibをロシュ社より導入、日本における独占的開発権および販売権を取得
  • inavolisibは、パルボシクリブ・フルベストラントとの併用により、ホルモン受容体陽性、HER2陰性の乳がんを対象とした海外第III相臨床試験(INAVO120)の良好な結果に基づき、米国FDAより画期的治療薬および優先審査に指定
  • inavolisibをベースとしたレジメンは、特定の乳がんのサブタイプの患者さんに対する新たな治療選択肢となることを期待

中外製薬株式会社(本社:東京、代表取締役社長 CEO:奥田 修、以下:中外製薬)は、エフ・ホフマン・ラ・ロシュ社(本社:スイス・バーゼル、CEO:トーマス・シネッカー、以下ロシュ社)とPIK3CA遺伝子変異を有するホルモン受容体(HR)陽性、HER2陰性の進行性乳がんに対し開発中のPI3Kα阻害剤inavolisibについて、本日、導入契約を締結しましたのでお知らせいたします。本契約の締結により、中外製薬はinavolisibの日本における独占的開発権および販売権の許諾を受け、その対価として契約一時金およびマイルストンをロシュ社に支払います。

代表取締役社長 CEOの奥田 修は、「PIK3CA変異は、HR陽性の乳がん患者さんの約40%1で見られます。PIK3CA遺伝子変異、HR陽性、HER2陰性の進行性乳がん患者さんの予後は悪く、アンメットメディカルニーズが存在しています。海外の臨床試験で良好な結果を示しているinavolisibは、乳がん患者さんへの新たな治療選択肢となることが期待されます。inavolisibを日本の患者さんに早期にお届けするため、ロシュ社と緊密に連携し国内開発を進めてまいります」と語っています。

inavolisibはロシュ・グループのメンバーであるジェネンテック社が創製し、現在、PIK3CA遺伝子変異を有する局所進行性または転移性乳がんのうち、HR陽性/HER2陰性の患者さんを対象に二つ(INAVO120、INAVO121)、HER2陽性の患者さんを対象に一つ(INAVO122)の海外第III相臨床試験が進行中です。INAVO120試験では、一次治療としてinavolisibをベースとしたレジメン(パルボシクリブ・フルベストラントとの併用)は、パルボシクリブ・フルベストラントのみに比べ主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)を2倍以上に延長し、病状の悪化または死亡リスクが57%減少することが示されました(15.0カ月対7.3カ月、ハザード比=0.43、95%信頼区間:0.32-0.59、p<0.0001)2。また、忍容性は良好で安全性プロファイルは管理可能であることが確認されています。
本試験の良好な結果に基づき、PIK3CA遺伝子変異を伴うHR陽性、HER2陰性の局所進行または転移性乳がんの一次治療に対し、inavolisibは米国食品医薬品局(Food and Drug Administration:FDA)より画期的治療薬(Breakthrough Therapy)の指定を受けるとともに、2024年11月27日をPDUFA(Prescription Drug User Fee Act:処方薬ユーザーフィー法)の審査期限として優先審査に指定されています。

中外製薬は引き続き、ロシュ・グループの研究・開発資源を有効に活用した画期的新薬の探索により、アンメットメディカルニーズの解決に取り組んでまいります。

inavolisibについて
inavolisibは、PIK3CA遺伝子変異、HR陽性、HER2陰性の進行性または転移性乳がん患者さんに、高い臨床的有用性と忍容性を示し、持続的な疾患コントロールが期待できる経口治療薬です。inavolisibは、治療の身体的負担と毒性を抑えるように設計されており、PI3Kαに対する高い活性と特異性を有し、PI3Kαの阻害と変異型PI3Kαの分解を促進する独自の作用機序を持ちます。

INAVO120試験について
INAVO120試験は、術後補助内分泌療法中または完了後12カ月以内に病勢進行し、転移性疾患に対する全身療法を受けていないPIK3CA遺伝子変異、HR陽性/HER2陰性、局所進行性または転移性乳がん患者を対象とする、inavolisib+パルボシクリブ+フルベストラント併用群と、プラセボ+パルボシクリブ+フルベストラント併用群の有効性と安全性を評価する海外第III相プラセボ対照二重盲検比較試験です。
本試験には325名の患者さんが参加しました。主要評価項目は無増悪生存期間(PFS)です。副次評価項目には、全生存期間、客観的奏効率、臨床的有用率が含まれます。
INAVO120試験は主要評価項目を達成し、PFSを対照群よりも7.7カ月延長し(ハザード比=0.43、95%信頼区間:0.32-0.59、p<0.0001)2、inavolisib+パルボシクリブ+フルベストラント併用群の優越性が検証されました。安全性は、高血糖・下痢・口内炎・嘔気・皮疹などの発現頻度が対照群と比較してinavolisib群で高かったものの、その多くはGrade1~2(Grade3~4の発現頻度は、高血糖:5.6%、口内炎:5.6%、下痢:3.7%、嘔気:0.6%、皮疹:0%)であり、忍容性は良好で安全性プロファイルは管理可能であることを確認しています。

ホルモン受容体(HR)陽性乳がんについて
HR陽性乳がんは、乳がんの中で最も多くみられるタイプで約70%3を占めます。HR陽性乳がんの特徴として、腫瘍細胞に、腫瘍の成長に寄与する可能性のあるホルモン(エストロゲンまたはプロゲステロン)の一つまたは両方に結合する受容体があります。HR陽性転移性乳がんと診断された方は、病気の進行や治療の副作用リスクに直面することが多く、新たな治療選択肢が求められています。HR陽性乳がんにおいて、PIK3CA遺伝子変異の活性化が原因でPI3Kシグナルの伝達経路が調節不全になりますが、これはサイクリン依存性キナーゼ4/6阻害薬と組み合わせた標準治療の内分泌療法に対する内因的耐性の潜在的メカニズムと考えられています。

出典:

  1. Mosele F, Stefanovska B, Lusque A, et al. Outcome and molecular landscape of patients with PIK3CA-mutated metastatic breast cancer. Ann Oncol. 2020;31(3):377-386. Available from:
    https://www.annalsofoncology.org/article/S0923-7534(19)39094-5/fulltext. Access date: July 2024
  2. JhaveriKL, et al. SABCS 2023 (Abstract GS03-13).
  3. National Cancer Institute: Surveillance, Epidemiology and Ends Result Program. Cancer Stat Facts: Female Breast Cancer Subtypes. Available from:
    https://seer.cancer.gov/statfacts/html/breast-subtypes.html. Access date: July 2024

以上

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