「Jnana Therapeutics社」の買収について- フェニルケトン尿症(PKU)のファースト・イン・クラスの経口治療薬となる可能性のあるJNT-517 を含むスペシャルティ・自己免疫領域のポートフォリオと創薬技術を拡大 -

2024/08/01  大塚製薬 株式会社 

大塚製薬株式会社

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2024年8月1日

「Jnana Therapeutics社」の買収について- フェニルケトン尿症(PKU)のファースト・イン・クラスの経口治療薬となる可能性のあるJNT-517 を含むスペシャルティ・自己免疫領域のポートフォリオと創薬技術を拡大 -

大塚製薬株式会社(本社:東京都、代表取締役社長:井上眞、以下「大塚製薬」)とJnana Therapeutics Inc.(本社:米国マサチューセッツ州ボストン、CEO:Joanne Kotz、以下「ジュナナ社」)は、本日、大塚製薬がジュナナ社に対して、大塚アメリカ Inc.(大塚製薬の100%子会社:Otsuka America, Inc. 以下「OAI社」)を通じて、ジュナナ社を完全子会社化(以下「本買収」)することについて合意し、契約を締結しましたので、お知らせします。本買収は、今後、必要な手続き等を経て、2024年度第3四半期中に完了する予定です。合意内容に基づき、大塚製薬はジュナナ社株主に対し、本買収の対価として本買収完了時に800百万米ドルを支払うとともに、開発品の進捗に応じた開発マイルストンおよび薬事マイルストンとして最大325百万米ドルを支払います。

1. 本買収の理由
ジュナナ社の革新的な創薬アプローチは、独自のRAPID(Reactive Affinity Probe Interaction Discovery)プラットフォームを使って実現されています。このRAPIDプラットフォームは、次世代のケモプロテオミクス技術を用いて、創薬には困難が伴うターゲットに対する医薬品を発見するために設計されています。これにより、大量のデータを効率的にスクリーニングする方法(ハイスループット)を用いて、ターゲットとなるタンパク質全体の結合部位を探し出し、多様な薬理作用を持つ低分子を同定することができます。ジュナナ社は、RAPIDを利用してファースト・イン・クラスの化合物を同定し、これまで創薬が難しいとされてきた細胞の内外で物質を運ぶためのタンパク質の一種である溶質キャリアや転写因子、シグナル伝達の基盤となるタンパク質など、さまざまな創薬ターゲットへの対応に成功しています。ジュナナ社は、英国ケンブリッジに本社を持つ大塚製薬の子会社であるアステックス・ファーマシューティカルズ社のフラグメント創薬技術とシナジーを生み出す新しい創薬アプローチを追求しています。

ジュナナ社の創薬技術は特定の疾患領域に限定されるものではありませんが、低分子創薬が困難だった自己免疫疾患領域や一部の希少疾患に集中することで、ユニークな競争ポジションを築いています。この創薬技術によりジュナナ社は、難創薬ターゲットである腎臓におけるアミノ酸の再吸収を制御するタンパク質に対する低分子阻害剤JNT-517を開発することに成功しました。JNT-517は、厳しい食事制限や医薬品で治療できない患者さんが多く残るPKUに対する有効な治療手段として、フェーズ1b/2試験で有効性および忍容性と安全性が確認されており、PKUに対するファースト・イン・クラスの薬剤になる可能性があります。PKUの患者さんの大部分は、現行の治療方法で十分な効果を得られていませんが、JNT-517は幅広い年齢層の患者さん、そして軽度から重度の症状に対応可能な治療法として期待されています。他にもインターフェロン産生のマスター転写因子である Interferon regulatory factor 3(IRF3) 等の創薬難易度の高い標的に対する活性化合物を獲得するなど、自己免疫疾患での低分子創薬の新たな可能性に挑戦しています。

大塚製薬は、ジンアーク(常染色体優性多発性嚢胞腎:ADPKD)、シベプレンリマブ(IgA腎症)、ボクロスポリン(ループス腎炎)などの腎領域だけでなく、ドニダロルセン(遺伝性血管性浮腫)などの新たなスペシャルティ治療薬を加えることで、幅広い希少疾患の患者さんへの貢献を進めてきました。また2018年に買収した米国ボストンのビステラ社を通じて、抗体医薬技術を用いた自己免疫領域の研究開発を進めるとともに、創薬プラットフォームの拡充を進めています。

大塚製薬 代表取締役社長 井上眞は、「このたびのジュナナ社との契約を締結することができたことを、非常に嬉しく思います。今回獲得したJNT-517は、アンメットメディカルニーズに挑戦する大塚製薬のさらなるポートフォリオの拡大につながります。さらにジュナナ社の創薬技術、自己免疫研究での低分子パイプラインが加わることで、世界で最も重要なバイオクラスターの一つである米国ボストン地域における研究開発を強化するとともに、複合的な形で大塚製薬のグローバル展開に相乗効果を与えていくことを期待しています」と述べています。

ジュナナ社のCEOであり共同設立者のJoanne Kotzは、「この契約締結は、世界クラスの低分子創薬プラットフォームである RAPID の構築など、当社設立以来の業績が評価されたものです。このプラットフォームを活用し、PKU治療薬としてファースト・イン・クラスの経口薬となる可能性のあるJNT-517を発見し、患者さんへの効果をPOC試験で確認することができました。私たちは、患者さんのために革新的な治療法を開発するという共通の目標を持つ大塚製薬に加わることで、JNT-517における2025年のフェーズ3試験開始を目指すとともに、自己免疫疾患に対する革新的なパイプラインを引き続き進展させることを楽しみにしています」と述べています。

2. 本買収の概要
本買収によりジュナナ社は大塚製薬の完全子会社としてマサチューセッツ州ボストンにおいて事業を継続し、同社の研究開発も継続して実施する予定です。また本買収は、大塚製薬が本買収のためにOAI社の傘下に設立した特別目的会社を、ジュナナ社を存続会社として同社に合併する形で実施されます。ジュナナ社の既存株主には、当該合併の対価として現金が支払われる予定です。当社、ジュナナ社両社の取締役会はそれぞれ本買収を承認していますが、本買収の実行には、ジュナナ社の株主総会の承認及び米国独占禁止法に基づく条件の充足等が必要となる可能性があります。これらの手続き等を経て、2024年第3四半期中の本買収完了を目指します。

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