東京農工大学との共同研究によりネコ尿臭を感じる受容体を特定 ―消臭作用のある香料も十数種発見―

2024/08/30  エステー 株式会社 

2024年08月30日

研究開発

東京農工大学との共同研究によりネコ尿臭を感じる受容体を特定 ―消臭作用のある香料も十数種発見―

エステー株式会社は、国立大学法人東京農工大学大学院工学研究院との共同研究で、ヒトの鼻においてトレースアミン関連受容体(※)の一種がネコ尿臭を受容していることを特定(同定)し、実用的な消臭作用のある香料物質を見つけることに成功しました。

(※)トレースアミン関連受容体
鼻の奥の嗅上皮にある化合物のアミンを検知することができるセンサーの役割を持つタンパク質のこと

ヒトは鼻の奥の嗅上皮にある約400種のニオイを感じとる受容体(ニオイセンサー)に、ニオイ分子が結合することで、ニオイを検知します。一般的に悪臭に応答する受容体を探るためには、単一の悪臭成分が用いられてきました。しかしながら、環境中に存在する実際の悪臭(以下、実悪臭)は、複数の悪臭成分の混合物として存在しているため、ヒトはこの実悪臭に含まれる複数の成分に同時にさらされた状態で悪臭を知覚しています。
そのため、今回の共同研究では、単一の悪臭成分ではなく、実悪臭を用いて応答する受容体を探ることで、よりヒトのニオイ知覚の実態に近い状態での試験が可能となりました。
これによりネコ尿に含まれるニオイ分子を充満させた空気を受容体に曝露させる試験方法を用いることによって、ネコ尿臭がトレースアミン関連受容体の一種に受容されることを見出しました。
また、この受容体に香料を添加した上でネコ尿臭を曝露させたところ、400種以上の香料物質の中から、ネコ尿臭に対する受容体の応答を抑制する(=ネコ尿臭を感じさせない)、十数種の香料物質を発見しました。
これらの香料物質を用いてヒトでの官能評価試験を行ったところ、ネコ尿臭に対する高い消臭作用を確認することができました。

今回特定されたネコ尿臭に応答するトレースアミン関連受容体は、腐った魚のようなニオイで、トイレ空間や冷蔵庫内、生ゴミなどから発生するトリメチルアミンに対しても応答することが知られています。トリメチルアミンについても、ネコ尿臭と同様にニオイを感じさせない香料物質の探索を行いました。その結果、抑制効果を示した香料物質はネコ尿臭を抑制する香料物質と効果順位などが異なっていることがわかりました。
このことから、実悪臭を用いて応答受容体の探索と受容体の応答を抑制する香料の探索の両方を行うことで、より効果的な消臭剤が選抜されたと考えられます。

実悪臭の中には、主要な悪臭成分が特定されていないものが多く存在しています。
今回の試験方法では、主要な悪臭成分が特定されていない実悪臭に対しても、応答する受容体の探索と受容体の応答を抑制する香料物質の探索が可能となるため、今後、様々な実悪臭に対しても効果的な消臭剤の探索が期待されます。

当社は、今後さらなる研究を進めていき、家庭や様々な空間における空気の課題を解決する製品の開発を目指し、社会に貢献していきたいと考えています。

なお、本結果は文京学院大学で開催された「第37回 におい・かおり環境学会 (2024年8月29日~8月30日)で発表しています。
また、本抑制剤となる消臭剤などの成果物については特許出願済みです。

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