ピアスカイ、発作性夜間ヘモグロビン尿症に対する初めての4週1回の皮下投与薬として欧州で承認

2024/09/02  中外製薬 株式会社 

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2024年09月02日

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ピアスカイ、発作性夜間ヘモグロビン尿症に対する初めての4週1回の皮下投与薬として欧州で承認

  • 自己投与可能※1な治療選択肢として、欧州における発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)患者さんとその介助者の治療負担軽減を期待
  • 維持投与期において、4週ごとのピアスカイ皮下投与が有効性について2週ごとのエクリズマブ静脈内投与に対して非劣性を示したCOMMODORE 2試験に基づく承認
  • 当社独自のリサイクリング抗体技術の適用により、4週ごとの皮下投与を実現

中外製薬株式会社(本社:東京、代表取締役社長 CEO:奥田 修)は、当社創製のpH 依存的結合性ヒト化抗補体(C5)モノクローナル抗体ピアスカイ®(一般名:クロバリマブ(遺伝子組換え))について、C5阻害剤による治療歴の有無によらず、発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)の成人および青年の患者(12歳以上で体重40kg以上)に対し、ロシュ社が欧州委員会より承認を取得したことをお知らせいたします。PNHは、補体系(自然免疫系の一部)が赤血球を破壊し、生命に影響を与えうる希少な血液疾患であり、貧血、疲労、血栓などの症状を引き起こし、腎臓病に至ることもあります1

中外製薬 代表取締役社長 CEOの奥田 修は、「当社創製のピアスカイが欧州において承認されたことを大変嬉しく思います。PNHの標準治療であるC5阻害剤は治療が長期にわたるため、患者さんや介助者の方の負担軽減が重要な課題です。ピアスカイは当社独自のリサイクリング抗体®技術の適用により、低用量で効果を発揮し、投与頻度が少なく済むように設計されています。これにより、維持期における4週ごとの皮下投与を実現しました。さらに、ピアスカイは、自己投与も可能※1となるため、患者さんの治療負担の軽減に大きく貢献していくことを期待しています」と語っています。

ピアスカイは、欧州において初めての4週ごとの皮下投与が可能なPNH治療薬です。また、適切なトレーニングを受けた場合は、患者さんまたは介助者による投与も選択可能であり、PNH患者さんと介助者の治療負担と日常生活への影響を軽減する可能性があります2

C5阻害剤は、補体系のカスケードの終末相を阻害する治療法であり、PNHの治療に効果的であることが示されています3。ピアスカイは、PNH治療における患者さんのニーズや課題に対処するために開発されました。ピアスカイは、当社独自のリサイクリング抗体技術の適用により、薬剤が補体C5に複数回結合して阻害し、少ない投与量で長時間作用することが可能となり、4週ごとの皮下投与を実現しています2,4

今回の承認はC5阻害剤による治療歴のないPNH患者さんを対象とした第III相試験COMMODORE 2試験の成績に基づいています。本試験では、4週ごとのピアスカイ皮下投与による疾患コントロールの達成と、良好な忍容性が示されました。ピアスカイは有効性について、既存の標準治療である2週ごとのエクリズマブ静脈内投与に対して非劣性を示しました。有害事象の発生率は、ピアスカイ群で78%、エクリズマブ群で80%でした4,5。申請には、現在承認されているC5阻害剤から切り替えたPNH患者を対象とした第III相試験(COMMODORE 1)と、中国において実施されたC5阻害剤治療を初めて受けるPNH患者を対象とした第III相試験(COMMODORE 3)のデータも補助的に含まれました4-8

ピアスカイはPNHに対する初めての4週ごとの皮下投与治療薬であり、米国や日本を含む複数の国・地域で承認されています。また、ピアスカイについてはPNHに加え、非典型溶血性尿毒症症候群、鎌状赤血球症を対象に、5つの第III相臨床試験と初期段階の3つの臨床試験を含む、幅広い臨床開発プログラムが実施されています5,6,8-13
※1日本において現時点では自己注射の適用はありません

COMMODORE 2試験について
COMMODORE 2試験は、C5阻害剤による治療歴のない発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)患者さんを対象にエクリズマブに対するクロバリマブの有効性および安全性を評価するランダム化非盲検国際共同第III相臨床試験です。本試験の二つの主要評価項目は輸血回避および溶血(LDH値により測定される進行中の赤血球破壊)のコントロールでした。本試験に登録された成人被験者※2は2:1の比で4週ごとのクロバリマブ皮下投与群または2週ごとのエクリズマブ静脈内投与群にランダムに割り当てられました。18歳未満の被験者は記述的解析群に含まれ、4週ごとにクロバリマブが皮下投与されました4,5
※2治験実施計画書改訂前に登録された18歳未満の2名を含む

ピアスカイについて
ピアスカイは、中外製薬独自のリサイクリング抗体技術を用い、当社が創製した抗補体C5リサイクリング抗体です。リサイクリング抗体は、抗原結合部位にpH依存性を持たせることで、1分子の抗体が繰り返し抗原に結合し、一般的な抗体に比べて長時間にわたり効果を発揮するようデザインされています。加えて、表面電荷改良技術を導入することにより抗原の血中からの消失速度を高め、従来のリサイクリング抗体よりも抗原を効率的に中和することで、投与量の低減を可能にしています。本剤は、補体系で重要な役割を担うC5を標的にすることで補体の活性化を制御するとともに、少ない投与量での4週ごとの皮下投与による治療で患者さんおよび介護者の負担軽減をもたらすことが期待されています。ピアスカイは既存薬とは異なる部位でC5に結合することから、アジアで報告されている既存の抗体医薬品が結合しない特定のC5遺伝子変異を有する患者さん(日本人においてはPNH患者さんの約3.2%)において有効な治療選択肢となり得ます2,14
本剤は2024年2月、中国において補体阻害剤による治療歴のないPNHの成人および青年患者(12歳以上)さんに対し初めて承認されました。日本においては2024年3月に発作性夜間ヘモグロビン尿症に対して承認後、同年5月より販売されています。米国でも2024年6月に承認を取得したほか、現在、台湾を含む各国においてもPNHに対する新薬として規制当局による承認審査中です。加えて、非典型溶血性尿毒症症候群の開発を行っており、海外ではロシュ社が鎌状赤血球症に対して臨床試験を実施しています。

発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)について
PNHは、PIG-A遺伝子に後天的に変異が生じた造血幹細胞がクローン性に拡大することにより、自己補体による血管内溶血を生じる造血幹細胞疾患です15。ヘモグロビン尿、血栓症などPNH特有の溶血に起因する症状と、再生不良性貧血と同様の造血不全症状の二面性を持ちますが、症状は患者さんにより異なります。合併症として、慢性腎臓病、肺高血圧症等を併発する場合があります。日本では指定難病の一つ(指定難病62)に数えられる希少な疾患であり、同疾患の令和4年度末の医療受給者証保持者数は、1,035人でした16

上記本文中に記載された製品名は、法律により保護されています。

出典:

  1. National Organization for Rare Diseases. Paroxysmal nocturnal hemoglobinuria. [Internet; cited August 2024]. Available at: https://rarediseases.org/rare-diseases/paroxysmal-nocturnal-hemoglobinuria/.
  2. Fukuzawa T, et al. Long lasting neutralisation of C5 by SKY59, a novel recycling antibody, is a potential therapy for complement-mediated diseases. 2017; Sci Rep 7, 1080.
  3. Peffault de Latour R, et al. Hemolytic paroxysmal nocturnal hemoglobinuria: 20 years of medical progress. Seminars in Hematology. 2022;59(1):38-46
  4. Roth A, et al. The Phase III, Randomised COMMODORE 2 Trial: Results from a Multicentre Study of Crovalimab vs Eculizumab in Paroxysmal Nocturnal Hemoglobinuria (PNH) Patients Naïve to Complement Inhibitors. Presentation at European Hematology Association (EHA) Annual Congress; 2023 June 08-13. Abstract #S181.
  5. COMMODORE 2 (NCT04434092). [Internet; cited August 2024] Available at: https://classic.clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT04434092.
  6. Scheinberg P, et al. Phase III Randomised, Multicentre, Open-Label COMMODORE 1 Trial: Comparison of Crovalimab Vs Eculizumab in Complement Inhibitor-Experienced Patients with Paroxysmal Nocturnal Hemogobinuria (PNH). Presentation at European Hepatology Association (EHA) Annual Congress; 2023 June 08-13. Abstract #S183.
  7. COMMODORE 1 (NCT04432584). [Internet; cited August 2024] Available at: https://www.clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT04432584.
  8. Liu H, et al. Six-month Crovalimab Extension in the Phase III COMMODORE 3 Study: Updated Efficacy and Safety Results in Complement Inhibitor-Naive Patients with Paroxysmal Nocturnal Hemoglobinuria. Poster presentation at European Hematology Association (EHA) Annual Congress; 2023 June 08-13. Abstract #P785.
  9. COMMUTE-p (NCT04958265). [Internet; cited August 2024] Available at: https://www.clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT04958265.
  10. COMMUTE-a (NCT04861259). [Internet; cited August 2024] Available at: https://www.clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT04861259.
  11. Nishimura J, et al. Crovalimab for Treatment of Patients With Paroxysmal Nocturnal Hemoglobinuria And Complement C5 Polymorphism – Experience From The Composer Phase I/II Study. EHA Library. 2020; Abstract #PB1992.
  12. CROSSWALK-a (NCT04912869). [Internet; cited August 2024]. Available at: https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT04912869.
  13. CROSSWALK-c (NCT05075824). [Internet; cited August 2024]. Available at: https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT05075824.
  14. Nishimura J et al. Genetic variants in C5 and poor response to eculizumab. N Engl J Med. 2014 Feb 13;370(7):632-9.
  15. 発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)の診断基準と診療の参照ガイド改訂版作成のためのワーキンググループ.発作性夜間ヘモグロビン尿症診療の参照ガイド 令和4年度改訂版
  16. 政府統計の総合窓口(e-Stat)(https://www.e-stat.go.jp/)衛生行政報告例 / 令和4年度衛生行政報告例 統計表 年度報(2024年8月アクセス)

以上

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