世界肺がん学会(WCLC)で発表したイフィナタマブ デルクステカン(I-DXd/DS-7300)の進展型小細胞肺がん患者を対象とした第2相臨床試験のデータについて

2024/09/09  第一三共 株式会社 

2024 年 9 月 9 日

第 一 三 共 株 式 会社

世界肺がん学会(WCLC)で発表したイフィナタマブ デルクステカン(I-DXd/DS-7300)の進展型小細胞肺がん患者を対象とした第2相臨床試験のデータについて

第一三共株式会社(本社:東京都中央区、以下「当社」)は、イフィナタマブデルクステカン(I-DXd/DS-7300、抗B7-H3抗体薬物複合体(ADC)*1、以下「本剤」)の、前治療歴のある進展型小細胞肺がん患者を対象としたグローバル第2相臨床試験(IDeate-Lung01)の中間解析データについて、世界肺がん学会(WCLC 2024)で初めて発表しましたので、その概要についてお知らせいたします。

本試験は、2つの投与量における本剤の有効性および安全性を評価する至適用量検討パートと、推奨用量における本剤の有効性および安全性をさらに評価する登録拡大パートからなります。

今回のWCLCでデータ発表を行った至適用量検討パートの結果に基づき、本試験の登録拡大パートおよび、現在進行中の再発小細胞肺がん患者を対象とした第3相臨床試験(IDeate-Lung02)における本剤の投与量として、12 mg/kgが選択されました。

有効性について、至適用量検討パートの本剤12 mg/kg投与群42名において、主要評価項目である客観的奏効率*2は54.8%(完全奏効 0名、部分奏効*3 23名)でした。副次評価項目である奏効期間*4の中央値は4.2ヵ月、病勢コントロール率*5は90.5%、無増悪生存期間*6の中央値は5.5ヵ月、全生存期間*7の中央値は11.8ヵ月でした。

また、サブグループ解析では、試験開始時点で頭蓋内に標的病変を有する患者(12 mg/kg投与群)10名において、頭蓋内病変の客観的奏効率は50.0%(完全奏効 2名、部分奏効 3名)でした。

安全性については、新たな懸念は認められず、本剤の他試験と同様の傾向でした。本剤12 mg/kg投与群42名において、グレード*8 3以上の有害事象は50.0%に認められました。間質性肺疾患(以下「ILD」)については、5名がILD外部判定委員会により本剤と関連のあるILDと判定されました。このうち4名が低グレード(グレード1および2)であり、グレード3は1名に認められました。グレード5(死亡)のILDは認められませんでした。

当社は、本試験データに基づき、現在進行中の再発小細胞肺がん患者さんを対象とした第3相臨床試験(IDeate-Lung02)を含め、本剤の開発を加速させてまいります。

以上

*1 抗体薬物複合体(ADC)とは、抗体と薬物(低分子化合物)を適切なリンカーを介して結合させた薬剤で、がん細胞に発現している標的因子に結合する抗体を介して薬物をがん細胞へ直接届けることで、薬物の全身曝露を抑えつつがん細胞への攻撃力を高めています。

*2 客観的奏効率とは、腫瘍が完全に消失または30%以上縮小した患者の割合です。確定した客観的奏効率を意味します。

*3 部分奏効とは、腫瘍が30%以上縮小した状態です。

*4 奏効期間とは、腫瘍の完全消失(完全奏効)または30%以上縮小(部分奏効)のどちらかの基準が最初に満たされた時点から、再発または増悪が客観的に確認された最初の日までの期間です。

*5 病勢コントロール率とは、客観的奏効率に腫瘍が安定している状態(腫瘍が30%未満縮小~20%未満増大)の患者の割合を加えたものです。

*6 無増悪生存期間とは、治療中および治療後に病勢進行せず安定した状態の期間です。

*7 全生存期間とは、原因を問わず死亡するまでの期間です。

*8 米国国立がん研究所(NCI)の有害事象共通用語規準(CTCAE)で規定された重症度を意味し、グレード1~5に分類されます。

小細胞肺がんについて
2022年に世界で新たに248万人以上が肺がんと診断されました。小細胞肺がんは、肺がんの中で2番目に多く、約15%の割合を占めています。小細胞肺がんは進行が早く、再発した場合の5年生存率は約3%と報告されています。現在、小細胞肺がん患者に対する二次治療の選択肢は限られており、新たな治療法が必要とされています。

イフィナタマブデルクステカン(I-DXd/DS-7300)について
イフィナタブデルクステカン(I-DXd/DS-7300)は、当社独自のリンカーを介して新規のトポイソメラーゼⅠ阻害剤(DXd)を自社創製した抗B7-H3抗体に結合させた薬剤で、当社で臨床開発を進めている6つのDXd ADCのうちの1つです。1つの抗体につき約4個のDXdが結合しています。B7-H3は、小細胞肺がんを含む様々ながん種において過剰発現しているタンパク質の一種で、がんの進行や予後の悪化に関係していると言われています。現在、小細胞肺がんを含むあらゆるがん種に対し、B7-H3を標的として承認されている治療薬はありません。

第一三共のADCパイプラインについて
第一三共のADCパイプラインは、第一三共独自の二つのADC技術プラットフォームから創製された、臨床開発段階にある7つのADCから構成されています。

一つ目のADCプラットフォームは、がん細胞表面に発現する特定の抗原を標的とした抗体と、複数のトポイソメラーゼⅠ阻害剤(DXd)をリンカーを介して結合させ、がん細胞の内部へDXdを届けるDXd ADC技術で、現在6つのADCがあります。トラスツズマブデルクステカン(エンハーツ®、抗HER2 ADC)およびダトポタマブデルクステカン(Dato-DXd/DS-1062、抗TROP2 ADC)は、全世界(当社が独占的権利を有する日本は除く)においてアストラゼネカと共同で開発および商業化を進めています。パトリツマブデルクステカン(HER3-DXd/U3-1402、抗HER3 ADC)、イフィナタマブデルクステカン(I-DXd/DS-7300、抗B7-H3 ADC)およびDS-6000(R-DXd、抗CDH6 ADC)は、全世界(当社が独占的権利を有する日本は除く)においてMerck & Co., Inc., Rahway, NJ, USAと共同で開発および商業化を進めています。DS-3939(抗TA-MUC1 ADC)は当社が単独で開発を進めています。

二つ目のADCプラットフォームは、がん細胞表面に発現する特定の抗原を標的とした抗体と、改変されたピロロベンゾジアゼピン(PBD)を結合させ、がん細胞の内部へ改変されたPBDを届けるADC技術です。DS-9606(抗CLDN6 ADC)は、このプラットフォームを活用した最初のADCです。

なお、ダトポタマブデルクステカン、パトリツマブデルクステカン、イフィナタマブデルクステカン、DS-6000、DS-3939およびDS-9606は、現在開発中の薬剤です。安全性および有効性はまだ確立されておらず、各国の規制当局による薬事承認は受けていません。

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