ダトポタマブ デルクステカン(Dato-DXd/DS-1062)のホルモン受容体陽性かつHER2低発現または陰性の転移性乳がん患者を対象とした第3相臨床試験における全生存期間の最終解析結果について

2024/09/24  第一三共 株式会社 

2024 年 9 月 24 日
報道関係者各位
会社名 第 一 三 共 株 式 会 社
代表者 代 表 取 締 役 社 長 奥 澤 宏 幸
(コード番号 4568 東証プライム市場)
問合せ先 コーポレートコミュニケーション部長 朝倉 健太郎
TEL 03-6225-1126

ダトポタマブ デルクステカン(Dato-DXd/DS-1062)のホルモン受容体陽性かつ
HER2低発現または陰性の転移性乳がん患者を対象とした第3相臨床試験における
全生存期間の最終解析結果について


第一三共株式会社(本社:東京都中央区、以下「当社」)は、ホルモン受容体(以下「HR」)陽性かつHER2低発現または陰性(IHC 0, IHC 1+ または IHC 2+/ISH-)の手術不能または転移性乳がん患者への二次/三次治療を対象とした、ダトポタマブ デルクステカン(Dato-DXd/DS-1062、抗TROP2抗体薬物複合体(ADC)*1、以下「本剤」)の第3相臨床試験(TROPION-Breast01)における全生存期間*2の最終解析結果の概要について、以下のとおりお知らせいたします。

本試験は、HR陽性かつHER2低発現または陰性の手術不能または転移性乳がんで、化学療法の前治療歴のある患者700名以上を対象に、本剤投与群の有効性および安全性を化学療法投与群と比較して評価したグローバル第3相臨床試験です。

本試験の主要評価項目の一つである全生存期間について、本剤投与群は化学療法投与群に対し、統計学的に有意な改善は認められませんでした。一方で、本試験においては、もう一つの主要評価項目である無増悪生存期間*3を既に達成しています。2023年10月開催の欧州臨床腫瘍学会(ESMO 2023)で発表したとおり、本剤投与群は化学療法投与群に対し統計学的に有意かつ臨床的に意義のある無増悪生存期間の改善を示しました。

なお、本試験では、患者が病勢進行後または投与中止後に受けた後続の治療(本試験期間中に新たに承認されたエンハーツ(R)はじめ複数のADCを含む)が全生存期間へ影響を与えた可能性があります。

安全性について、新たな懸念は認められず、乳がんを対象とした本剤の他の試験と同様の傾向でした。本剤と関連のある間質性肺疾患(ILD)の発現率は低く、中間解析以降に新たに報告されたグレード*4 3以上のILDはありませんでした。本試験結果の詳細は、今後、学会にて公表する予定です。

当社は、本剤を世界中のHR陽性かつHER2低発現または陰性の乳がん患者さんへお届けできるよう、各国・地域の規制当局との協議を進めてまいります。

以 上

*1 抗体薬物複合体(ADC)とは、抗体と薬物(低分子化合物)を適切なリンカーを介して結合させた薬剤で、がん細胞に発現している標的因子に結合する抗体を介して薬物をがん細胞へ直接届けることで、薬物の全身曝露を抑えつつがん細胞への攻撃力を高めています。
*2 全生存期間とは、原因を問わず死亡するまでの期間です。
*3 無増悪生存期間とは、治療中および治療後に病勢進行せず安定した状態の期間です。
*4 米国国立がん研究所(NCI)の有害事象共通用語規準(CTCAE)で規定された重症度を意味し、グレード1~5に分類されます。

HR 陽性かつ HER2 低発現または陰性の乳がんについて

乳がんは、がんによる死亡の主な原因の1つであり、2022年には全世界で新たに200万人以上が診断され、約67万人が亡くなったとの報告があります。早期乳がんと診断された患者の生存率は高いものの、転移性乳がんの予後は悪く、5年生存率は35%以下と推定されています。

乳がん患者全体の約 70%を占める HR 陽性かつ HER2 低発現または陰性(IHC 0, IHC 1+ またはIHC 2+/ISH-)の乳がんの初期治療には内分泌療法が広く用いられています。内分泌療法後にがんが進行すると、標準治療である化学療法が行われますが、その治療効果は限定的であり、新たな治療の選択肢が必要とされています。

TROP2 は、HR 陽性かつ HER2 低発現または陰性の乳がんに高発現するタンパク質の一種で、がんの進行や生存率の低下に関係していると言われています。

ダトポタマブ デルクステカン(Dato-DXd/DS-1062)について

ダトポタマブ デルクステカン(Dato-DXd/DS-1062)は、がん細胞の細胞膜上に高発現する抗原TROP2 と特異的に結合するヒト化モノクローナル抗体(札幌医科大学との共同研究)に、当社独自のリンカーを介してトポイソメラーゼⅠ阻害剤(以下「DXd」)を結合させた薬剤で、1 つの抗体につき約 4 個のDXd が結合しています。薬物をがん細胞内に直接届けることで、薬物の全身曝露を抑えるよう設計されています。

第一三共ADCパイプラインについて

第一三共のADCパイプラインは、第一三共独自の二つのADC技術プラットフォームから創製された、臨床開発段階にある7つのADCから構成されています。

一つ目のADCプラットフォームは、がん細胞表面に発現する特定の抗原を標的とした抗体と、複数のトポイソメラーゼⅠ阻害剤(DXd)をリンカーを介して結合させ、がん細胞の内部へDXdを届けるDXd ADC技術で、現在6つのADCがあります。トラスツズマブ デルクステカン(エンハーツ(R)、抗HER2 ADC)およびダトポタマブ デルクステカン(Dato-DXd/DS-1062、抗TROP2 ADC)は、全世界(当社が独占的権利を有する日本は除く)においてアストラゼネカと共同で開発および商業化を進めています。パトリツマブ デルクステカン(HER3-DXd/U3-1402、抗HER3 ADC)、イフィナタマブ デルクステカン(I-DXd/DS-7300、抗B7-H3 ADC)およびDS-6000(R-DXd、抗CDH6 ADC)は、全世界(当社が独占的権利を有する日本は除く)においてMerck & Co., Inc., Rahway, NJ, USAと共同で開発および商業化を進めています。DS-3939(抗TA-MUC1ADC)は当社が単独で開発を進めています。

二つ目のADCプラットフォームは、がん細胞表面に発現する特定の抗原を標的とした抗体と、改変されたピロロベンゾジアゼピン(PBD)を結合させ、がん細胞の内部へ改変されたPBDを届けるADC技術です。DS-9606(抗CLDN6 ADC)は、このプラットフォームを活用した最初のADCです。

なお、ダトポタマブ デルクステカン、パトリツマブ デルクステカン、イフィナタマブ デルクステカン、DS6000、DS-3939およびDS-9606は、現在開発中の薬剤です。安全性および有効性はまだ確立されておらず、各国の規制当局による薬事承認は受けていません。

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