女川原子力発電所2号機における移動式炉心内計装系の点検結果に係る原因と対策について
2024年11月11日
当社は、2024年11月3日、女川原子力発電所2号機に係る再稼働(発電再開)に向けた発電機試験併入時において発生した移動式炉心内計装系※1の事象について、11月4日に原子炉を停止し、原因調査を進めてまいりましたが、本日、本事象が発生した原因および再発防止対策を取りまとめました。
地域の皆さま、関係の皆さまにご心配をおかけいたしましたことをお詫び申し上げます。
当社といたしましては、今回策定した再発防止対策を確実に実施し、引き続き、安全確保を最優先に、一つひとつのプロセスを丁寧に進め、女川原子力発電所2号機の再稼働(発電再開)に向けて着実に取り組んでまいります。
事象の概要および原因と再発防止対策は、以下のとおりです。
※1 原子炉運転中において、原子炉内の中性子を計測する検出器の校正等を行う設備。(原子炉内の案内管※2を移動式炉心内計装系の検出器が移動し、炉内の中性子を測定する)
※2 検出器を原子炉内の測定箇所まで送り込むための導管。
【事象の概要】(別紙1参照)
当社は、11月3日、女川原子力発電所2号機に係る再稼働(発電再開)に向けた発電機試験併入時において、中性子を計測する検出器を校正するため、移動式炉心内計装系の検出器を原子炉内に挿入および引き抜き作業を行っていたところ、引き抜き動作時に移動式炉心内計装系の検出器4台のうち1台(以下「当該検出器」という)が途中で動かなくなる事象が発生した。
このため、11月4日に原子炉を停止し、原因調査を進めてきた。
(2024年11月3日、11月4日お知らせ済み)
【調査結果】(別紙2参照)
原子炉格納容器内など現場調査の結果、以下の所見を確認した。
(1)案内管接続部の外れ
当該検出器のケーブルを原子炉内へ送り込むための案内管において、原子炉格納容器内の伸縮継手※3と案内管の接続部が外れていることを確認した。
また、案内管の下にある配管サポートに擦過痕があることを確認した。
(2)検出器ケーブルの曲がり
当該検出器のケーブルに曲がりがあることを確認した。
(3)案内管接続部のナットの外れ
案内管と原子炉格納容器の貫通部フランジ継手※4の接続部においてもナットが緩み、外れていることを確認した。
※3 原子炉の運転中に発生する熱による部材の伸縮を吸収するもの。
※4 原子炉格納容器内の配管と格納容器外の配管を接続するもの。
【事象発生の推定メカニズム】(別紙3参照)
本事象が発生した推定メカニズムは以下のとおり。
(1)伸縮継手と案内管の接続部におけるナットの締め付け不足
案内管は、伸縮継手と接続する際に伸縮継手側をしっかりと固定しながらナットを締め付けないと、ナットと伸縮継手が供回り(同時に回転)してしまう可能性がある構造※5であった。
案内管については、2024年5月に交換作業を行っており、伸縮継手と案内管の接続を行う際、伸縮継手側をゴムシート養生の上から工具で固定してナットの締め付けを行ったが、ゴムシート養生の滑りにより伸縮継手側の固定が不十分となったため、案内管側と伸縮継手側の接続部が供回りしてしまい、ナットの締め付けが不足した。
(2)案内管の交換作業時における接続部のナットの緩み
案内管は伸縮継手側と反対側にも接続部があり、一方の締め付けを行う際にもう一方の接続部のナットが緩む方向に力が加わる可能性のある構造※5であった。
案内管の交換作業において、伸縮継手側と反対側の接続部の締め付けを行ったところ、伸縮継手と案内管の接続部のナットが緩んだ。
(3)伸縮継手と案内管の接続部の外れ
上記(1)(2)により、ナットの締め付けが不足した状態で、「原子炉停止中から原子炉起動時」の各段階における移動式炉心内計装系の動作確認等※6で生じた振動により、ナットの緩みが進展し、伸縮継手と案内管の接続部の外れに至った。
(4)移動式炉心内計装系検出器の逸脱、停止
伸縮継手と案内管の接続部が外れた箇所から、外に出た当該検出器のケーブルが、原子炉格納容器内のグレーチング※7等に引っ掛かったことで、引き抜き動作時に当該検出器の停止に至った。
(5)移動式炉心内計装系検出器ケーブルの曲がり、案内管と原子炉格納容器貫通部フランジ継手の接続部のナット外れ
停止した当該検出器を手回しで引き抜く際、当該検出器またはケーブルの引っ掛かりによりケーブルに力が加わったことで曲がりが生じたとともに、案内管に荷重がかかったことで案内管と原子炉格納容器貫通部のフランジ継手の接続部のナットも緩んで外れた。
※5 発電所内で、同様の構造となっている箇所は移動式炉心内計装系の配管のみであることから、事案発生箇所以外の移動式炉心内計装系の配管の継手部の締付状態も確認している。
※6 各段階における動作確認等の時系列は別紙1を参照。
※7 主に鉄などの金属で作られた格子状のふた。
【事象発生の原因】
本事象に係る要因となったナット締め付け不足、緩みが生じた原因は以下のとおり。
(1)移動式炉心内計装系の案内管の締め付け作業に関する作業手順に以下の項目が明記されていなかった。
a.伸縮継手と案内管の接続作業を行う際の締め付け方法に関する留意点。
b.継手接続作業において、締め付け時に緩み方向の力が発生する可能性のある箇所に関する注意事項。
(2)移動式炉心内計装系の案内管の締め付け作業後に、締め付け状態の確認を行っていなかった。
(3)作業員は締め付けが不十分となる可能性がある構造であることを、十分に理解していなかった。
【再発防止対策】
(1)施工者が実施する移動式炉心内計装系の案内管の締め付け作業に関する作業手順について、確実に固定し、供回りや締め付け時に緩み方向の力が発生することを防止する手順とし、この手順を当社が承認する。
(2)締め付け作業後に接続部のトルク管理を実施し、確実に締まっていることを確認する。また、これらの作業には当社が立会い、締結状況を確認する。
(3)上記手順の改正については、作業を担当する作業員への周知を行うとともに、今回の事象について作業責任者への教育資料に事例として記載を行い、継続的に注意喚起を行う。
(水平展開)
当社としては、本事象の重要性を踏まえ、各種工事における締め付け作業について、継続して確実な施工管理に努めていく。
以 上
「プレスリリース本文のPDFファイルはこちら」