GSKのJemperli(ドスタルリマブ)、局所進行性のミスマッチ修復機能欠損を有する直腸がんを対象に米国FDAよりブレイクスルーセラピーに指定

2024/12/23  グラクソ・スミスクライン 株式会社 

23 December 2024

GSKのJemperli(ドスタルリマブ)、局所進行性のミスマッチ修復機能欠損を有する直腸がんを対象に米国FDAよりブレイクスルーセラピーに指定

  • ドスタルリマブによる治療を完了した42例の患者さん全例において、100%の臨床的完全奏効率が得られたことに基づく指定

  • ブレイクスルーセラピー指定(Breakthrough Therapy Designation)とは、重篤な疾患に対して既存の治療法を上回る効果が得られる可能性のある薬剤に対して指定される

  • 現在の標準治療は生活の質を損なう可能性があり、新しい治療選択肢の必要性が強調されている

この資料は、英国GSK plcが2024年12月16日に発表したプレスリリースの日本語抄訳であり、報道関係者各位の利便性のために提供するものです。この資料の正式言語は英語であり、その内容およびその解釈については英語が優先されます。詳細は https://www.gsk.com/をご参照ください。

GSK(本社:英国)は、Jemperli(ドスタルリマブ)が、ミスマッチ修復機能欠損(mismatch repair deficient、以下dMMR)または高頻度マイクロサテライト不安定(microsatellite instability-high、以下MSI-H)を有する局所進行直腸がん患者さんに対する治療薬として、米国食品医薬品局(FDA)よりブレイクスルーセラピー(Breakthrough Therapy)の指定を受けたことをお知らせします。ブレイクスルーセラピーとは、重篤な疾患に対する治療となる可能性のある薬剤について、臨床試験から得られた予備的な結果から既存の治療を上回る効果が期待できることが示された場合に、その新薬の開発および審査を迅速化させる制度です1。ドスタルリマブは、dMMRまたはMSI-Hを有する局所進行直腸がん患者さんに対して2023年1月にファストトラック(Fast Track)指定を受けており2、今回はそれに続く、同じ患者集団に対する2回目の規制当局からの指定になります。

GSKのR&Dオンコロジー部門のグローバルヘッドでシニアバイスプレジデントのヘシャム・アブドラ(Hesham Abdullah)は次のように述べています。
「現在までに、ドスタルリマブによる100%の臨床的完全奏効率が報告されており、今回の指定は、この前例のない成績に基づくものです。さらに、dMMRまたはMSI-Hを有する局所進行直腸がん患者さんは、長期に渡るQOLの低下に直面しており、今回の指定は、このような患者さんの治療におけるパラダイムシフトを後押しするものでもあります。現在進行中のAZUR-1試験では、引き続きこの患者集団を対象としたドスタルリマブの評価をしています。」

米国FDAのブレイクスルーセラピー指定は、メモリアル・スローン・ケタリングがんセンター(Memorial Sloan Kettering Cancer Center)との共同研究としてGSKの支援のもと進められている第II相試験から得られた予備的な臨床的エビデンスに基づいています。本試験では、dMMRを有する局所進行直腸がんの初回治療において、ドスタルリマブの投与が完了した患者さん42例全例で100%の臨床的完全奏効率(clinical complete response:cCR)という前例のない結果が得られました。臨床的完全奏効とは、磁気共鳴画像法(MRI)、内視鏡検査、PETスキャン、直腸指診により腫瘍の形跡が認められないことと定義されています。評価した最初の24例の患者さんでは、追跡期間中央値26.3カ月(95% CI:12.4~50.5)の時点で臨床的完全奏効が持続していました。なお、ドスタルリマブの安全性および忍容性プロファイルは、既知の安全性プロファイルとおおむね一致していました。本試験では、グレード3以上の有害事象は報告されませんでした3。本試験では引き続き、登録された患者さんにおいて評価をしています。また、dMMRまたはMSI-Hを有する局所進行直腸がんを対象として現在進行中のGSKの第II相試験AZUR-1試験は、上記の共同研究で得られた結果を確認することを目的としています。

dMMRまたはMSI-Hを有する局所進行直腸がんに対する現在の標準治療*は、化学療法と放射線による初回治療の後に、腸管や周辺組織の一部とともに腫瘍を切除する手術を行うというものです4。その結果、ほとんどの患者さんで当初は良好な転帰が得られますが、最終的には3分の1近くの患者さんにおいて、がんが体の他の部位に転移することで死に至るといわれています(遠隔転移)5。さらに、標準治療*として行う手術や化学放射線療法によって、腸管や泌尿器の機能障害、性機能障害、二次性のがんや不妊症などの長期的な有害事象を発症し生活の質に悪影響を及ぼす可能性があります2
*欧米の標準療法であり、日本の標準療法については、大腸癌治療ガイドライン医師用等を参照ください。

現在、ドスタルリマブは、dMMRまたはMSI-Hを有する局所進行直腸がんの初回治療薬として世界のどの国・地域においても承認されていません。

dMMR/MSI-Hを有する直腸がんについて
直腸がんは、大腸のうち、肛門の直前に位置する直腸に発生するがんの一種であり、大腸がんという総称の一部に分類されることが多いがんです。大腸がんの診断件数は世界で3番目に多くなっています6。米国では、年間で約46,220人が直腸がんと診断されると推定されています7。直腸がん全体のうち約5~10%はミスマッチ修復機能欠損(dMMR)/高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-H)となっています(これは細胞内で間違ってコピーされたDNAの適切な修復に影響する異常があるということです)8。ミスマッチ修復機能欠損の状態は、抗PD-1療法による免疫チェックポイント阻害に対する効果を予測できるバイオマーカーであるとされています9,10。このバイオマーカーを有する腫瘍は、子宮体がん、大腸がんやその他の消化管のがんで通例多くみられますが、その他の固形がんでもみられることがあります11-14

Jemperli(ドスタルリマブ)について
Jemperliはプログラム細胞死1(PD-1)受容体阻害薬であり、GSKが現在実施中の腫瘍免疫領域の研究開発プログラムにおいて中核に据えられています。臨床試験プログラムとして、婦人科がん、大腸がん、肺がんを対象にJemperliの単独投与や他の治療との併用投与を検討する試験などを行っており、これらの試験から革新的な結果が生まれる可能性を秘めています。

米国では、Jemperliとカルボプラチンおよびパクリタキセルとの併用療法に続くJemperliの単剤療法が、FDAの承認を受けた検査でdMMRと判定された、もしくはMSI-Hと判定された初発進行または再発の成人子宮体がん患者さんに対する治療として承認されています。また、Jemperliの単剤投与が、FDAの承認を受けた検査においてdMMRと判定された再発または進行子宮体がんの成人患者さんで、プラチナ製剤を含むレジメンでの治療中または治療後に進行が認められ、根治手術または放射線療法の対象とならない患者さんへの治療として承認されています。さらに、食品医薬品局(FDA)が承認した検査でdMMRと判定された再発または進行固形がん患者さんのうち、前治療中または治療後に進行が認められ、十分な代替治療がない患者さんに対してもJemperliが適応とされています。本適応は、腫瘍縮小効果が認められた患者さんの割合および効果の持続性を根拠として、迅速承認されました。検証的試験で臨床上の有効性を実証することができれば、固形がんに対する本適応の承認が継続されます。

JemperliはAnaptysBio社で開発され、2014年3月に署名された共同独占的ライセンス契約によりTESARO, Inc.社が権利を有しています。上記契約に基づきGSKは、JemperliおよびTIM-3拮抗薬であるcobolimab(GSK4069889)に関し、進行中の研究、開発、商品化および製造に責任を負っています。

オンコロジー領域におけるGSK
GSKは新たな治療領域としてオンコロジー領域に注力しており、がん免疫療法および腫瘍細胞標的療法の画期的な治療法の開発を通じて、血液悪性腫瘍、婦人科がん、その他固形腫瘍領域を中心に、患者さんの予後改善に向けて取り組んでいます。

グラクソ・スミスクライン(GSK)について
GSKは、サイエンス、テクノロジー、人財を結集し、力を合わせて病に先手を打つことを存在意義とするバイオ医薬品のグローバルリーダーです。詳細情報はhttps://jp.gsk.com/をご参照ください。

1 US Food and Drug Administration. Breakthrough Therapy. Available at: https://www.fda.gov/patients/fast-track-breakthrough-therapy-accelerated-approval-priority-review/breakthrough-therapy
2 US FDA Advisory Committee votes in support of trials designed to evaluate Jemperli (dostarlimab-gxly) as a potential treatment for mismatch repair-deficient/microsatellite instability-high locally advanced rectal cancer. Available at: https://www.gsk.com/en-gb/media/press-releases/us-fda-advisory-committee-votes-in-support-of-trials-designed-to-evaluate-jemperli-dostarlimab-gxly-as-a-potential-treatment-for-dmmrmsi-h-locally-advanced-rectal-cancer/
3 GSK、局所進行性のミスマッチ修復機能欠損を有する直腸がん患者さんを対象としたJemperli(dostarlimab)の臨床試験において100%の完全奏効率を継続的に示す良好な結果を発表. Available at: https://jp.gsk.com/ja-jp/news/press-releases/20240614-jemperli-dostarlimab-trial-continues-to-show-unprecedented-results/
4 Cercek A, Lumish M, Sinopoli J, et al. PD-1 blockade in mismatch repair–deficient, locally advanced rectal cancer. N Engl J Med 2022; 386: 2363-76.
5 Smith JJ, et al. Rectal Cancer Consortium. Organ Preservation in Rectal Adenocarcinoma: a phase II randomized controlled trial evaluating 3-year disease-free survival in patients with locally advanced rectal cancer treated with chemoradiation plus induction or consolidation chemotherapy, and total mesorectal excision or nonoperative management. BMC Cancer. 2015 Oct 23;15:767. doi: 10.1186/s12885-015-1632-z. PMID: 26497495; PMCID: PMC4619249.
6 Sung H, Ferlay J, Siegel RL, et al. Global Cancer Statistics 2020: GLOBOCAN Estimates of Incidence and Mortality Worldwide for 36 Cancers in 185 Countries. CA Cancer J Clin. 2021;71(3):209-249. doi:10.3322/caac.21660.
7 Siegel RL, Giaquinto AN, Jemal A. Cancer statistics, 2024. CA Cancer J Clin. 2024;74(1):12-49. doi:10.3322/caac.21820
8 Cercek A, et al. Mismatch Repair-Deficient Rectal Cancer and Resistance to Neoadjuvant Chemotherapy. Clin Cancer Res. 2020 Jul 1;26(13):3271-3279. doi: 1158/1078-0432.CCR-19-3728. Epub 2020 Mar 6. PMID: 32144135; PMCID: PMC7348681.
9 Le DT, et al. PD-1 blockade in tumors with mismatch repair deficiency. N Engl J Med. 2015;372(26):2509-2520.
10 Andre T, Berton D, Curigliano G, et al. Antitumor Activity and Safety of Dostarlimab Monotherapy in Patients With Mismatch Repair Deficient Solid Tumors: A Nonrandomized Controlled Trial. JAMA Netw Open. 2023;6(11):e2341165. doi:10.1001/jamanetworkopen.2023.41165
11 National Cancer Institute at the National Institutes of Health. Definition of mismatch repair deficiency. Accessed April 19, 2024. Available at: https://www.cancer.gov/publications/dictionaries/cancer-terms/def/mismatch-repair-deficiency.
12 Lorenzi M, et al. Epidemiology of microsatellite instability high (MSI-H) and deficient mismatch repair (dMMR) in solid tumors: a structured literature review. J Oncol. 2020. doi.org/10.1155/2020/1807929.
13 Zhao P, et al. Mismatch repair deficiency/microsatellite instability-high as a predictor for anti-PD-1/PD-L1 immunotherapy efficacy. J Hematol Oncol. 2019;12(1):54. doi: 10.1186/s13045-019-0738-1.
14 Laken H, Kehry M, Mcneeley P, et al. Identification and characterization of TSR-042, a novel anti-human PD-1 therapeutic antibody. European Journal of Cancer. 2016;69, S102. doi:10.1016/s0959-8049(16)32902-1.

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