抗タウ抗体etalanetug(E2814)に関する最新知見をCTAD2025で発表Etalanetugが脳内タウ病理に特異的なCSFおよび血液中の新規バイオマーカーeMTBR-tau243を減少させることを臨床第Ⅰb/Ⅱ相試験にて確認
エーザイ株式会社(本社:東京都、代表執行役CEO:内藤晴夫)は、このたび、米国・サンディエゴおよびバーチャルで開催されている第18回アルツハイマー病臨床試験会議(Clinical Trials on Alzheimer’s Disease Conference: CTAD)において、抗タウ抗体etalanetug(開発コード:E2814)に関する最新知見を発表しましたのでお知らせします。Etalanetugは、タウタンパク質の微小管結合領域(MTBR)に結合し、タウ病理のシード形成と伝播を阻止することを目的とした抗体です。
抗タウ抗体etalanetugは、DIAD当事者様において新規バイオマーカーである血液中eMTBR-tau243を減少させる(発表:12月1日(月)午後4時35分 米国太平洋時間)
本発表は、DIAD(顕性遺伝アルツハイマー病)*当事者様(7例)を対象に実施された第Ⅰb/Ⅱ相試験(E2814-103)に基づくものです。本試験では、既報のとおり、タウPETを用いて当事者様(3例)の脳内タウ凝集体の量を測定した結果、脳内タウ凝集体はetalanetug投与により安定化もしくは減少傾向を示し、etalanetugがタウの伝播を抑制し、タウ凝集体の蓄積の増加を抑えていることが示唆されています1。
MTBR-tau243は、タウ病理と相関があるCSFのバイオマーカーですが、血液においても感度が高いバイオマーカーとしてeMTBR-tau243**が開発されました。eMTBR-tau243は、タウタンパク質の243番残基と微小管結合領域を含み、且つ256番残基のC末端側が内因性切断(endogenously cleaved)されたタウ断片で構成される新規液性バイオマーカーであり、アルツハイマー病(AD)の重要な病理上の特徴である神経原線維変化の形成過程で生じると考えられています。CSFおよび血液中の双方において、eMTBR-tau243はタウPETと高い相関があることが示されています2。 eMTBR-tau243を用いることで、タウ病理の変化を血液中でも簡便に測定することが可能となります。
本解析の結果、etalanetug投与により、CSF中のeMTBR-tau243は3カ月後に62%減少し、9カ月後には89%減少しました。同様に、血液中のeMTBR-tau243も3カ月後に78%減少し、9カ月後には90%以上減少しました。これらの結果は、タウ病理のシード形成と脳内の拡散を阻止するというetalanetugの作用機序を裏付けるものであり、ADに対する疾患修飾治療剤としての臨床上の可能性を明らかにするための更なる研究を後押しするものです。
現在、etalanetugについては、二つの臨床試験が進行中です。一つは、セントルイス・ワシントン大学医学部(米国ミズーリ州セントルイス)が主導する顕性遺伝アルツハイマーネットワーク試験ユニット(Dominantly Inherited Alzheimer Network Trials Unit: DIAN-TU)で実施されている、DIADに対する臨床第Ⅱ/Ⅲ相Tau NexGen試験であり、標準治療である抗アミロイドβプロトフィブリル抗体レカネマブ(製品名「レケンビ®」)との併用を評価する試験です。もう一つは、孤発性早期ADに対するグローバル無作為化臨床第Ⅱ相202試験であり、こちらもレカネマブとの併用を評価する試験です。
*DIAD(Dominantly inherited Alzheimer‘s disease/顕性遺伝(優性遺伝)アルツハイマー病)は、稀な遺伝性遺伝子変異によって生じるADで、AD当事者様の総数の1%未満の方がこの病気を患っています。典型的には30代から50代にかけて、記憶消失や認知症を引き起こします。
**eMTBR-tau243は、タウタンパク質の243番残基と微小管結合領域を含み、且つ256番残基のC末端側が内因性切断(endogenously cleaved)されたタウ断片で構成される新規液性バイオマーカーであり、アルツハイマー病(AD)の重要な病理上の特徴である神経原線維変化の形成過程で生じると考えられています。
以上
<参考資料>
1.Etalanetug (E2814)について
Etalanetugは抗MTBR(Microtubule binding region)タウ抗体です。Etalanetugは、当社とユニバーシティ・カレッジ・ロンドンとの共同研究を通じて見出されました。Etalanetugは、タウ伝播種の脳内拡散を抑制する抗体として設計されています。Etalanetugは、孤発性ADを含むタウオパチーに対する疾患修飾薬として開発されました。現在、etalanetugについて、二つの臨床試験が進行中です。一つは、セントルイス・ワシントン大学医学部が主導するDIAN-TUで実施されている、DIADに対する臨床第Ⅱ/Ⅲ相Tau NexGen試験であり、標準治療である抗アミロイドβプロトフィブリル抗体レカネマブ(製品名「レケンビ」)との併用を評価する試験です。もう一つは、孤発性早期ADに対するグローバル無作為化臨床第Ⅱ相202試験であり、こちらもレカネマブとの併用を評価する試験です。2025年9月に、米国食品医薬品局(FDA)よりFast Track指定を受領しました。
参考文献
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1
Wildsmith K, Horie K, Charil A et al., Anti-tau therapeutic antibody, E2814, reduces early and late tau pathology biomarkers in patients with DIAD. The Journal of Prevention of Alzheimer’s Disease. 12 (1) 2025 10043 (page 13)
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2
Horie, K.et al. Plasma MTBR-tau243 biomarker identifies tau tangle pathology in Alzheimer’s disease. Nat Med 31, 2044–2053 (2025). https://doi.org/10.1038/s41591-025-03617-7