資生堂は、40年以上にわたる化粧に関する感性科学の研究を応用し、近年、脳科学・心理学領域で注目の「AWE(オウ)体験」に着目し、見るだけで美しくなれる畏敬を引き起こす映像を開発しました。本映像は、2025年1月22日にオープンするShiseido Beauty Parkの「Shiseido Art & Science Lab」の象徴的なコンテンツとして、1階の16K大画面を有する「Beauty Retreat Theater(ビューティー・リトリート・シアター)」で上映されます。実証試験では、約9割の映像体験者が比較対象の自然風景映像よりも畏敬の度合いを高く評価※1し、AWE体験に寄与していることが示唆されました。
2030年のビジョン「Personal Beauty Wellness Company」の実現に向け、これらの研究成果を当社の化粧品やサービスの価値開発に応用し、一人ひとりが生涯を通じて自分らしい健康美を実現できる社会を目指します。
《AWEとは? 心と身体、社会に引き起こすポジティブな影響》
AWEとは、日本語で「畏敬の念」を意味し、果てしない壮大な風景などを前に、自分の存在の小ささを知る体験のことを指します。AWEを体験すると脳活動に変化を起こし、身体の炎症を抑え、利他の精神を高めるなど、心や身体、さらには社会へもポジティブな影響があることが科学的に次々と解明され始めています。
資生堂の感性科学研究では、広告・製品外装デザインや新しい美容サービスなどを通じてもAWEを引き起こすことがわかっています。これらの結果から、美がもたらす影響は見た目の美しさを整える役割を超え、心や身体に働きかけ、自然との調和や他者・社会との協調を促すなどのポジティブな影響をもたらす可能性が示されました。この先進的な研究成果の一部は、化粧品技術に関する世界最大の権威ある研究発表会IFSCC※2 2024でポスター発表しました。
《Art & Scienceを融合し、約9割※1 がAWE(畏敬の念)を感じた映像体験》
本映像は、AWE体験がもたらす心と身体へのポジティブな影響を”美しさ”ととらえ、ArtとScienceを融合させました。見るだけで美しくなれる畏敬を引き起こす映像体験の提供を目指し、資生堂の研究員監修のもと企画・制作しました。心理学で用いられる評価方法を採用した実証試験では、体験した20~60代の男女の約9割が、比較対象の自然風景映像よりも畏敬の度合いを高く評価し、映像視聴がAWE体験に寄与していることが示唆されました※1。さらに、体験者の呼吸変動などの生理指標データの変化も計測しており、心と身体への影響と生理指標データの関連についても研究を進めています。
また、本映像はサイエンスだけではなく、アートの側面も取り入れています。映像テーマ「Human Beauty Landscape」を設定し、大自然の雄大な造形と人体の美の間にある不思議な類似性をモチーフにしています。春夏秋冬の荘厳な自然の風景からミクロな細胞の世界へと向かう旅路の果てに、誰も見たことのない光景を表現しました。第一弾は、冬季限定で厳しい雪山や広大な氷山の映像を組み合わせた「Hydrating Winter」を上映し、今後も季節に合わせた映像を上映します。
※1 2024年資生堂調査(対象:20~60代の男女51名)で88.2%が比較対象の自然風景映像よりも畏敬の度合いを高く評価しました
※2 IFSCC:The International Federation of Societies of Cosmetic Chemists
《制作背景や実証試験の様子をまとめた動画》
https://corp.shiseido.com/jp/r/yt/20250115/01/?rt_pr=trr79
https://www.youtube.com/watch?v=Tr9x9Aqlwko
《参考情報》
■資生堂開発者の想い
株式会社資生堂 みらい開発研究所 主任研究員(博士) 岡崎 俊太郎
当社の感性科学研究を応用し、本映像の監修を担当しました。AWE体験を実現するためには、美しく壮大な自然風景が典型的な例として挙げられますが、アート性の高いCGを用いた本映像でどのようにAWE体験を実現するかは非常に難しい課題でした。制作者と綿密に議論を重ね、AWE体験を高めるための細かな表現方法を研究の視点から調整しました。今後も、AWE体験がもたらす肌・身体・心の美を高める効果に注目し、新たな美の可能性を追求する先進的な研究に取り組んでいきたいと考えています。
■技術アドバイザーとして参画するAWE研究の第一人者
関西大学 文学部 心理学専修 教授 石津 智大 先生
資生堂とのプロジェクトでは、「畏敬」や「崇高」の体験に関わる過去の知見を紹介しながら、研究についてアドバイスを行いました。映像の評価では、科学的に確立された尺度を用い、単純な質問では捉え難い客観的な指標で検証しています。また映像自体は、自然の壮大さやミクロの驚異を捉え、鑑賞者に自然との一体感を感じさせるように作られている点が素晴らしいと感じました。畏敬の念には利他的な態度の促進、自然環境への配慮を促す可能性があることが示されています。世界的に見ても、畏敬のような美的感性がもつポジティブな効果の応用に注目が集まっています。今回の映像体験は広い意味での「美」というものにアプローチする先進的な取り組みだと思います。