法改正によりグレーゾーン金利が違法となり、過払い金返還が大きく業績を引き下げている。サービス展開にあたってはチャネル、審査、回収などにおいてインフラや特殊なノウハウが求められる
まず業界プレイヤーの業績に大きくマイナスの影響を与えている”過払い金問題”が発生した一連の法改正の流れを示したい。2006年12月に貸金業法改正案が可決し上限金利の引き下げや登録要件の強化、貸金額の総量規制などが追加された。従来までの貸金業法では、出資法と利息制限法の上限金利の間にズレがあり、例えば100万円の貸し付けの際の上限金利が利息制限法の15%を越えて29.2%までの間に設定されているケースが見られた。これがグレーゾーン金利と呼ばれるもので、利息制限法の上限を越えても債務者が任意に(自己の自由な意思によって)支払うというような要件を満たした場合は罰則がなく、返還は認められない(”みなし弁済”と呼ばれる)金利での貸し付けがおこなわれていた。つまり債務者が上限を越えた金利を気付かずに支払ってしまっていた場合に「任意」と捉えられ、超過分が返還されないという状況が続いていたのである。しかし、一連の法改正や最高裁判決によって出資法上限金利が引き下げられ、グレーゾーン金利が違法となり、超過分の”過払い金”の返還請求ができるようになった。この結果として、グレーゾーン金利で貸し付けをおこなっていたプレイヤーは長期にわたり利息返還を続けることを余儀なくされており、2009年頃のピーク時では年間全体でおよそ5,000億円の利息返還がおこなわれ、2015年に入っても年間約2,000億円程度の返還が続いている。これにより多くのプレイヤーは経営難に陥り、市場縮小や業界再編の一因となっている。今後は法改正から10年が経過し、返還請求権の消滅時効を迎える事案が増加するため、返還額は縮小していくと予想されている。
ノンバンク業界のサービスの特徴としては、まず審査が簡素化されており、有人・無人店舗や電話での申し込み、近年ではインターネットにて必要事項と身分証明書を登録するだけで申し込みが完了する。基本的には雇用形態を問わず週5日程度働いている人であれば審査を通過し、それぞれの状況によって限度額や金利が決定される。借り入れの方法はカードローンが一般的で、コンビニなどのATMにおいて限度額まで引き出せるようになっており、返済に関してもATMでの振り込みや口座引き落としなど自動化が進んでいる。また返済日に支払いがおこなわれなかった場合には回収業務が発生し、規制の範囲内での取り立て業務がおこなわれる。このサービスフローの中でノンバンク業界は、チャネル、顧客接点の多面化を実現するためのインフラ構築と、適正な審査による適正な金利・限度額の設定、必要に応じた効率的な回収など、貸し倒れリスクを軽減するための特殊なノウハウが求められている。