出版物は情報を広く一般に流布させる媒体という役割を負うことから、コンテンツの販売のみならず広告掲載による収入を得られる。委託販売・再販制度などの業界特有の制度が存在する点には注意が必要
出版とは、紙などの媒体に情報を付加し、書籍や雑誌などの形で複製・流通させることをいうが、その方式にはいくつかの種類が存在する。形態別には新聞、雑誌、書籍、フリーペーパーに分類ができ、雑誌と書籍についてはさらに細かく分類ができる。流通させるコンテンツの性質によってこのなかから適切な出版形式を選ぶことになるが、例えば速報性が重視されるニュースなどの情報については新聞、また写真の多いファッション・商品の情報を流通させたい場合は雑誌、長いテキストが続くコンテンツの場合は書籍などという形で使い分けがされている。他の分類法としては、新聞であればその展開地域により「全国紙」や「地方紙」などもある。いずれの出版物も広く流通させるためには情報の質やアイデア・企画編集力が重要であり、制作の現場は人に依存する業務である。また、広く一般に流布されることから企業の広告を載せる媒体にもなり得るため、出版事業者の収入源は単純に出版物の売上に限らず広告収入も含まれることになる。
出版物の基本的な制作プロセスとしては、企画・制作準備・制作・編集・販売という工程をたどる。機能としては編集機能と出版機能があり、編集はその名の通り雑誌や書籍などを制作する役割、出版は出版物をより多く販売するための宣伝広告の企画を担う。特に、出版については時代をリードしていくコンテンツである性質上、ある種の啓蒙活動としての広告宣伝の業務が重要となる。各プロセスで編集と出版が連携しながら出版物の販売に至る。
なお、出版業界には業界特有の慣習が存在している。「委託販売」「再販制度」である。委託販売は1908年に始まった制度であるが、出版社が販売を書店に委託する形式で販売をおこなう制度で、小売業者は売れ残った書籍を返品することが可能である。出版物というものがコンテンツの流布という目的をもつ関係上、書店での棚の確保などのマーケティング活動に柔軟性を持たせるためにも活用されている制度である。一方で再販制度は1915年に始まった制度であり、書店が出版物を読者に販売する価格を出版社側が指定してもよいという制度である。これにより、コンテンツには一定の価格が付き、価格競争に陥りにくい仕掛けになっている。しかしながら、この委託販売や再販制度の仕組みが課題にもなっている。委託制度があるため小売側は実販売量よりも多くの仕入れをおこなうことになり、結果多くの返品が生じて出版社の業績が圧迫される。また再販制度に関しては健全な価格競争を阻害するとの見方もできてしまう。中古流通品の比率も高まり、インターネットでの情報流布も早くなる中、新品の出版物の販売価格を守る再販制度も崩れつつある。