マス四媒体は軒並み苦戦。デジタル化の取り組みもみられ、テレビメディアはイベント等に左右される媒体
広告代理店業界は、マス四媒体と呼ばれる「新聞・雑誌・ラジオ・テレビメディア」広告に加え、インターネット広告の台頭で市場は拡大している。新聞・雑誌は近年市場の大幅な縮小が続いており、テレビメディアもインターネット広告の台頭で市場は緩やかに縮小が続いている。ラジオはインターネットを活用したサービスの活用で横ばい傾向である。各広告の特徴は、以下である。
インターネット広告は、「媒体費+物販系ECプラットフォーム広告費+制作費」を合算したもので、社会全体の急速なデジタル化を受けて急成長している。特に、動画配信サービスの利用者増加に伴い動画広告の需要が高まり、映像系の市場が拡大している。
新聞は、比較的信頼度の高い媒体であるため、選挙の際の官公庁の広報など公的な広告出稿も多い。またシニア層にリーチするため、健康食品、化粧品といった通販の広告媒体としても需要が高い。特性として地域によって内容が変わるため、エリアを考慮した展開が可能である。一方、デザイン性などの自由度は低い。一カ月の販売部数は近年加速度的に減少が続き、デジタル化への対応を行うも全国紙(五大紙)で2,000万部を割り込み減少傾向に歯止めがかかっていない。
雑誌は、ファッション関連の広告が主軸となっているが、紙ベースの他の媒体と同様に販売数は縮小している。特徴としてはターゲットセグメントを絞りやすく、デザイン性も高いため、消費者の購買意欲を刺激しやすいという利点がある。しかしながら、掲載までのタイムラグが大きいため鮮度に欠け、不特定多数へのリーチには不向きである。雑誌は一般誌と専門誌に大別され、代表的な一般誌である週刊文春の発行部数は50万部程度で、注目度は高いながらも年々部数を減少させている。専門紙はビジネス誌や趣味、ライフデザイン、コミックなどジャンルは多岐にわたる。近年、紙ベースの販売形態からインターネットで記事やコンテンツをバラ売りする媒体も出始め、収益の多様化を目指している。
ラジオは、スマートフォンラジオアプリの登場で新たな視聴者を獲得し、他の媒体の市場が縮小傾向であるのに対し横ばいで推移している。インターネットラジオは期限内であればリアルタイムでなくとも都合の良い時間に聴くことができるタイムフリー機能などがあり、SNSと連携した新しいラジオの楽しみ方なども発信され若年層へのアプローチに成功している。ラジオは「1対1の距離感」という特性により若年層にリーチしやすく、また中高年層の支持も厚い。地域密着型の放送局では、地元のきめ細かなニーズに合わせた広告として活用されている。近年インターネットラジオでは、地上波ラジオの一斉同報広告とは異なり、視聴者の属性・嗜好性に合った広告を個別に差し替えて配信することが可能となり、One to Oneマーケティングの場としても役割が見直されている。
テレビメディアはもっとも高価であるが、広範囲にリーチすることが可能でインパクトが大きく、話題性を生むことも多い媒体である。テレビCMによる広告は、大きくタイムCMとスポットCMに大別される。タイムCMは個別の番組の枠内で放送するCMであり、スポットCMは番組関係なく指定の時間に放送するものである。基本的にタイムCMは番組が指定されることからターゲット層が明確なため契約の単価も高くなっており、一方、スポットCMはターゲットを絞りにくいため単価は低い。また、ワールドカップやオリンピックといった話題性のあるイベントによって市況も左右され、料金なども変動することは特徴である。