印刷物は情報産業の一翼を担う。工程は多岐にわたるが、情報化の進展にともない簡素化が進み、印刷前工程や後工程で付加価値を出す企業が増えてきている
印刷物は媒体に情報を載せるという性質上、情報産業の一翼を担い、企業や団体の情報伝達やコミュニケーションを支援することが大きなサービス価値である。従来の印刷媒体は紙がメインであったが、現在ではプラスチックの包装材や建材への印刷、ひいてはパソコンやスマートフォン、サイネージなどで情報コンテンツを流通させることも印刷業者のサービス範囲となっている。また、消費者の需要の多様化にともない受注ロットは小さいことが多く、受注型の産業であることから顧客側からの指定事項が多い。
印刷物の種類は多岐にわたるが、大きくは商業・出版印刷、証券印刷、事務用印刷、包装印刷に分類でき、加えて特殊印刷やソフトサービスも分類に含めることがある。比率としては商業・出版印刷が最も多く、業界二強と言われるTOPPANホールディングスや大日本印刷も商業・出版印刷中心の事業を展開している。また、上場企業のディスクロージャーを支援する証券印刷やビジネスフォームを印刷する事務用印刷、商品パッケージに利用される紙器や包装誌、シールなどを印刷する包装印刷も大きい。近年では情報化にともないデザインやデータ入力などのソフトサービスに取り組む企業も増えてきている。大手企業についてはWebデザインや電子チラシなどを含めたクロスメディア戦略を提案・実現する事業も手がける。
印刷の工程は大きくプリプレス、プレス、ポストプレスの3段階に分類ができる。プリプレスは印刷物の中身をつくりあげる工程であり、企画・デザインや原稿執筆・校正、また版をつくる工程である製版が該当する。従来は各工程を担当する熟練技術者がいたが、近年では情報化にともないDTP(デスクトップパブリッシング)というパソコン上で業務ができるシステムが整い、プリプレス工程は簡素化している。製造された版は印刷機械に組み込まれ、紙に複製をされる。印刷方式には凸版印刷や平板印刷、凹版印刷などがあり、印刷媒体の特性や印刷するコンテンツ、品質水準によって適切な印刷方式が選ばれる。例えば写真の多い雑誌の印刷は凹版印刷(グラビア印刷)、ポスターやチラシはコストの安い平板印刷など使い分けがされる。ポストプレス工程は書籍やカタログの場合の製本、チラシの折り込み、紙器の組立てなど印刷物を使用する場面に合わせて加工をおこなう工程である。近年は商品の箱詰めや在庫管理、拠点への配送などポストプレスで付加価値をつける企業も多くなっている。
なお、近年では印刷技術の発展が著しい。主な動きとしてデジタル印刷・オンデマンド印刷がある。デジタル印刷とは従来の大規模な印刷機械ではなく高精度化したデジタル印刷機を用いて版無しで、小ロット・短納期で印刷できる印刷方式である。品質は従来の印刷方式に劣るものの、その利便性からシェアを伸ばしている。また、オンデマンド印刷ともいわれるのはDTPのシステムが発達したことにより顧客側でも簡単にプリプレス工程ができるようになり、顧客のニーズをそのまま印刷物に反映しやすくなったことを背景としている。