石炭は石油・天然ガスと比べ安定供給が可能。一方で、環境への影響や輸送・貯蔵の困難性が欠点となる
石炭は、植物の遺骸が地中に堆積し、地圧や地熱を長期間受けることで炭化したものである。石炭は化石燃料の一種であるが、石油や天然ガスと比較して、以下のような特徴を持つ。
・資源が世界的に分散している。石油・ガスは中東地域に資源が偏在しているのに対し、石炭は欧州・北米・アジア・オセアニアと各地域に賦存しており、供給の安定性が比較的高い。
・可採年数が長い。石油・天然ガスの可採年数が50年前後であるのに対し、石炭は139年である。ただし、石油は探索・採掘技術開発の進展によって可採年数が増加しているが、石炭の可採年数は減少傾向にある。
・燃料として安価。燃料の質や使用方法にもよるが、石炭の熱量あたりの価格は、石油・液化天然ガスの3分の1程度である。供給源が分散しているため、価格変動は石油・天然ガスよりも比較的小さい。
・環境影響が大きい。石炭は燃焼時の排煙・排ガス・二酸化炭素などによる環境影響が大きく、対策が必要である。
・輸送や貯蔵が困難。石油・天然ガスはパイプラインによる輸送が可能であるが、石炭は車両・船舶などによる輸送が必要である。ただし、日本と海外を結ぶパイプラインは現在存在しないため、輸入においては石油・天然ガスとの差は小さい。
石炭化の進行度により性質が異なる。石炭化度が高く、粘結性を持つ瀝青炭は、コークス化することで鉄鋼原料として活用できることから、付加価値が高い
石炭は植物遺骸から生成するため、石炭化の進行度により性質が異なる。国際的に統一された基準はないものの、水分が多く炭素含有量が少ないものから順に、泥炭~褐炭(亜炭)~亜瀝青炭~瀝青炭~無煙炭と分類されている。
石炭として工業的に多く利用されるのは、燃料として不純物が少なく発熱量の高い亜瀝青炭・瀝青炭・無煙炭である。中でも瀝青炭は、粘結性と呼ばれる性質を持ち、コークス化して鉄鋼原料として利用することが可能であることから、原料炭と呼ばれる。瀝青炭のうち粘結性の低いものや亜瀝青炭は一般炭と呼ばれ、主に発電用・産業用の燃料として利用される。
原料炭は鉄鋼原料として代替が困難なため、価格は高くなりやすい。特に粘結性が高いほど良質なコークスが得られるため、価格も高価である。一般炭は炭素含有量が多いほど発熱量が高く、高価となる。