トレーディングを主軸として、事業開発、事業投資、事業経営を展開
総合商社はその名のとおり、資源・エネルギー、インフラ、機械、化学品、生活産業と、幅広い産業に関わっている。業界内の役割という軸でみると、総合商社が提供している価値・機能は大きく「トレーディング機能」、「事業投資・経営機能」、「事業開発機能」に大別される。
トレーディング機能はグローバルな需給格差や情報格差を「埋め、つなげる」仲介機能を主軸に、物流機能、金融機能、情報・調査機能、リスクマネジメント機能を総合的に提供することでソリューションプロバイダーとしての価値を生み出している。
事業投資・経営機能はこれまで手がけてこなかった新分野に投資するとともに、投資先の企業価値向上を図るための経営管理をおこなう機能である。これによりバリューチェーンを構築・強化することで、仲介業からの脱却、提供できるソリューションの幅の拡大をし、提供価値をより高めている。
事業開発機能はこれまでにない、もしくは手がけてこなかった新規事業を開発する機能である。これはトレーディング機能、事業投資・経営機能を総合的に活用して関係者を巻き込み、関わる事業フィールドを拡大していくことで新たな価値の創造をおこなっている。
これまで商社に求められてきた基本役割は需給格差や情報格差を「埋め、つなげる」ことであり、それゆえ基本機能としてトレーディングが発達してきた。しかしグローバル化と情報社会の進展により情報・与信力格差が縮小し、商社に求められる機能は事業投資・経営機能や事業開発機能へ比重がシフトしてきた。各社ともその対応を急いでいる。
なお、総合商社がこれほどまでに発達しているのは日本だけであるが、これは、①輸出拡大のための海外営業機能が必要だったこと、②貿易のプロが必要だったこと、から国策として支援を受け優位性を築き上げたという時代背景と、③財閥が国内に企業グループを形成していたため、製造業に特化するメーカーと、貿易・流通を担う商社、という役割分担の下に商権を確保していたという事業環境が背景となっている。