医薬品卸が扱う医薬品は先発医薬品・後発医薬品・長期収載品の三種類。薬価基準引き下げの影響により、収益構造は特殊なかたちとなっている
医薬品卸が取り扱う商品は、医療機関・調剤薬局向けの医療用医薬品と、ドラッグストア向けの一般用医薬品に分類できる。医療用医薬品は医師の処方箋が必要で、一般用医薬品はドラッグストア等で市販されている。流通量としては医療用医薬品9割、一般用医薬品1割といわれ、医療用医薬品の流通が大きい。医療用医薬品はさらに、製薬メーカーが新しく有効成分などを開発した先発医薬品(新薬)、特許切れ先発医薬品と同一の成分を含む後発医薬品、後発医薬品が発売されている先発医薬品である長期収載品に分類される。近年では後発医薬品が、価格の優位性と国の使用促進政策により大きくシェアを伸ばしている。
医薬品卸の中核機能として営業機能があるが、それを担うのがマーケティングスペシャリスト(MS)である。MSは様々な商品の知識を持ち、それぞれを比較提案しながら、販売するスキルを有する。製薬会社の営業担当者であるメディカルレプレゼンタティブ(MR)が医師や薬剤師に対する医薬品情報の提供を中心とするのに対して、MSは販売・流通機能に特化している。また近年はエムスリーが医療情報専門サイトの提供を開始、2025年7月時点で医師会員数が34万人(国内医師の約9割)を突破し、製薬会社のMR関連のコストカットに寄与している。
また、医薬品卸の収益構造は特殊である。収益源は大きく医薬品の仕入れと販売の売買差益と製薬会社からのリベート(割り戻し)・アローワンス(協賛金)に分類ができる。製薬メーカーから医薬品卸への販売価格は「仕切価」、医薬品卸から医療機関・調剤薬局への販売価格は「納入価」と呼ばれ、医薬品卸の売買差益は「納入価-仕切価」となる。一方、医療機関・調剤薬局から患者への販売価格である「薬価」と「納入価」の差額は医療機関の利益となっている。薬価基準制度により薬価は2年に1回改定されるが、医療費抑制策による薬価の引き下げが進む中、医療機関からの納入価引き下げの要求は強く、医薬品卸の多くで売買差益がマイナスとなっている。医薬品卸への利益補填するのがリベート・アローワンスの慣習である。リベートはメーカーとの取引量や医療機関・調剤薬局への配送頻度などの諸条件を達成することでメーカーから卸に払われる報奨金である。またアローワンスはメーカーの販売促進活動への協力に対して支払われる協賛金である。売買損益のマイナスをリベート・アローワンスで補てんすることで利益を出しているという特殊な収益構造が医薬品卸の特徴である。また、価格に関する慣習として「価格未決定取引」というものがある。医薬品の納入価が未決のまま商品を卸し、後から価格交渉を開始する形態である。これは医薬品が人命にかかわる商品であるということに起因しているが、他業界と比較すると特殊な慣習である。