医療法人は医療サービスを提供する社団または財団。患者が適切な治療を受けられるよう支援する診療報酬のしくみも業界理解の上では留意が必要
医療を提供するサービスに触れる前に、提供主体である医療組織について解説をしておきたい。
医療組織は大きく分類して病院と診療所の2種類がある。両者の違いは施設内にある病床の数であり、患者20名以上を収容できる医療組織を「病院」、19名以下の場合を「診療所」という。病院、診療所の中でもその入院患者の特性に応じていくつかの分類ができる。診療所は、長期の療養が必要な患者を入院させるものを療養病床、それ以外を一般病床と呼び、病院の場合はさらに細かく、精神疾患を有する患者を入院させる精神病床、結核患者を入院させる結核病床、感染症患者を入院させる感染症病床、そして療養病床と一般病床がある。また、以上の分類の仕方とは別に、地域医療機関を支援し高度医療の場所を提供する地域医療支援病院や、高度先端医療を提供する特定機能病院(例えば大学病院など)の分類がなされることもある。いずれにせよ、各医療組織が効率的に医療サービスの提供ができるよう、機能分化がおこなわれている。
加えて、「医療法人」の定義についても触れておきたい。医療法人とは、病院・診療所の経営主体が社団または財団であるものをいう。対極として法人化しない個人事業主があるが、この場合と比較して法人化するメリットとしては、医療の非営利性を保ちつつ医療経営の安定性・永続性・継続性を確保することである。例えば、個人事業所の場合にかかる最高税率が45%に対して、医療法人では最高税率が25.5%になり、また役員報酬を給与所得とみなして給与所得控除を適用できたり、法人格を取得することで外部に対する信用力の強化ができたりする。一方で、余剰金の出資者への配当が出来ない点や、知事による指導監督の厳格化などのデメリットも存在する。そもそも医療は人命に直接関わる極めて公共的性格の強い業種であり、営利を目的とする病院・診療所の開設が否定されたり、広告できる事項が医療法によって制限を受けるなど、通常の企業経営とは異なる性質を持っている。
その一環として、診療報酬のしくみにも触れておくことが必要であろう。診療報酬とは公的に定められた医療サービス価格のことであり、医療機関が個々の治療行為に対して受け取る診療代の公定価格をいう。診療報酬が定められていることによって、医療費の内訳を明朗に把握することができ、また保険者からの医療費のやり取りも明確におこなうことができる。なお、保険者と医療機関の間ではレセプト(診療報酬明細書)がやり取りされる。そのレセプトが、提供する医療サービスの対価として適当なものかを審査する目的で審査機関が間に入っており、不正請求や過誤請求がなく明朗な報酬のやり取りがおこなわれるためのしくみができている。従来はレセプト請求を紙ベースでおこなっていたが、事務効率化の観点から現在はレセプト電算処理システムが構築されており、スムーズなレセプト処理ができるようになっている。
以上のような数々の制約を受けながら、医療法人は各種医療サービスを提供している。そのサービスの種類は、内科、外科、精神科、皮膚科、眼科、耳鼻科、歯科など患者の症状に応じたものとなっている。